2022/12/20

ディスクヘブン再訪・2022年末編

しばらく前に凄く久々に行った、と思っていたのが今年の1月だった。そこから更に久しぶりの先週末、2022年二度目の熟ディグをしにお邪魔した。

HM/HR専門CDショップとして一時期は東京名古屋大阪と展開していた我らがディスクヘブンも、時世が変わって今は御器所→荒畑寄りの御器所→大須(1F)→大須(2F)と移転を重ねてきた名古屋1店舗のみの営業となった。
昔は権威ある専門誌の点数付きレビューページの評価に異議を唱え、独自のマイナーなオススメ盤を世界中から見つけてきては、狭小な店舗に鬼のように積み上げて売りさばく、オルタナティブな発信者的なポジションにあった気が(今にして思うと)する。こっちが正道なんですが、という気概すらあったような。
短い期間だったけど、地元FM局の深夜枠で、マスター自ら出演する「ヘブントゥナイト」なる番組も持っていたことがあった。もちろんタイマー録音で欠かさず聴いた。オープニング曲はイングヴェイのアレ。どのタイミングでだったか毎回流れていたD級ジャーマンメロスパー・NOT FRAGILEの"Lost In A Dream"もまだCD持ってるし。

ワタシは上得意というほど通い詰めてはいなかったけど、高校生時分はちょっとお金をためて年に2~3回、「そろそろ行くぞ」と勇んで突入しては、権威ある専門誌の白黒広告ページでしか見たことのない話題のマイナー輸入盤の現物を垂涎の思いで手に取ったり、教科書的な名盤をルーズリーフにリストアップして計画的に買い求めに行ったりしていたクチである。気になる盤が増えるたびにその買い物リストを更新していたのも懐かしい思い出。
大学以降は中古セクションでたまたま買ったフランスのMISANTHROPEをきっかけに、欧州の異様なデス/ゴシックメタルに傾倒し、リリース元のHOLY RECORDSの作品をコンプリートする勢いで買い漁り、その数年後にもデスメタル勃興~隆盛直後の価値観崩壊を受けてあらぬ変異を起こすバンドが多発した90年代初期ヨーロッパシーンのマイナー盤を定期的にジャケ買いしに通っていた時期があった。

昔はお店で買い物をすると、小さなジャケ画像とレコメン文がびっしり詰め込まれた入荷情報チラシが袋に入っていて、それを見るのがけっこう好きだった(「TERRORIZERを聴いてない奴はモグリ」等、B誌ではあまり口を酸っぱく言われない大事な歴史もそこで学んだ)。そこにしょっちゅう「有名アーティストの国内盤もウチで買ってください」と書かれていたから、マイナー輸入盤ばかり求めてやって来ては「誰々の何々ないですか?」と尋ねてくるワタシのような奴はあまり良い客ではなかったのだろうなと思う。

時は経って最近の入荷情報を見ると、国内バンドや人気アーティストの新譜国内盤が多く、独自レコメンも正統派寄りのものを中心にピックアップしている様子で、国内メタルシーンを現行のものとして回し続けていくために奮闘している印象を受ける。
いわゆる嬢メタル的な、個人的にちょっと理解の及ばないものもガンガンサポートしていて、自分のディグ熱低下も相まって次第に立ち寄る機会が少なくなっていった。

がしかし先述のとおり、今年はじめ頃に数年ぶりにお邪魔してみたら、さすがにもうあらかた売り抜いたかな...と思っていたかつてのマイナー輸入盤が今も全然、店内のスペースの3分の1は余裕で占めている(目分量)。これは既にプレミア価格では...?という正真正銘のデッドストック品が、入荷したときと同じ2000円前後で並びまくっていて、これは一度じっくり腰を据えて見に来ねばと思っていたのだった。
そのチャンスが直近の週末に不意に訪れ、結果的に2時間くらい店内に滞在してしまった。

集中力があるうちに先に見る中古棚がいきなり、市場価格がつり上がるか上がらないか微妙な線の廃盤多数。御器所時代後期からずっとここに眠り続けている品もあるようなないような。続いて新品コーナー、ユニオン入荷情報でいい値段で見かけそうな佇まいのやつがそれはもうゴロゴロと、ひとつひとつ見てられないくらい大量にありまくるのだけど、普通に往年の新品くらいの値段ではあるので全部買うわけにもいかず。
世の中古価格とも照らし合わせながら厳選の末、結局CDは新品と中古を1枚ずつ、会計後にレジ前に見つけたお宝デッドストックLP箱で追加の2枚、合計4点購入にとどまった。ついでにその前の今年1月の収穫(=写真左側の3枚)とあわせてこんな感じ。

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MERZYはリプロじゃない正規盤だと信じたい(なぜか高いのとちょっと安いのがあった)。GARY SCHUTTのハートジャケのほうはジェフ・スコット・ソート・ウォッチャー必携です。TRIXTERの復活後第1弾は既にレア化してるのでノーマル価格で掘り当てられて本当によかった。M.L.ファーキンスは言わずもがな最高。CRIMSON GLORYの3rdはやっぱり冷静に向き合うと聴きどころがよくわからんけど、このビジュアルが1000円で登場したら反射的に買うしかない(高校時代に「TRANSCENDENCE」をそれこそヘヴンで買って以来、なにげに思い入れ深いバンドでもある)。SKINTRADE記事1本書いてしまうレベルの衝撃の再会だったなー。その後復活作もALFONZETTIも入手しました(JAGGED EDGEはまだ保留中)。

最近ちょっと好きなデンマークのGROPEが全部揃ってたり、アメリカのPAIN OF SALVATIONことEVENTの1stがまだあったりしたので、また近いうちに行かねばと思っているところ。RISING SUNやLONG ISLANDなどの良心的すぎて廃業になってしまったレーベルのことをちゃんと気にかけているプライスカードのコメントにも心底和んだ。
ちなみに前回・今回とも藤谷マスターは見かけず、同じくらいの年代と思しき別の男性が店番をしておられた。ビル(・アンドリュース/ex.DEATH)ちゃんも居なかったけど、今はなき中古CD/レコード店・今池P-CAN FUDGEのバーゲン初日開店前にビルちゃんと一緒によく並んでいた大きめの体格のブロンド一つ結びのアングロサクソン男性は、少し前に上前津付近の路上で見かけて元気そうだった。

お店のツイッターやウェブショップの最近の感じを見て「もういいか...」となっているかつてのキッズ諸氏も、あのデッドストックの山に今一度胸を高鳴らせに行ってみるとよいと思う。
うだうだ考えを述べたあと必ず、適当に絞り込んだ不特定少数に対するオススメ文句に着地して終わった気になるワタシの文章の癖は、権威ある専門誌の読者寄稿コーナー「Ready 4 Action」から来てるんだろうなと、遠いメタル絡みの記憶につられていま(そして今更)気が付いた。思春期に受ける影響はつくづく一生もんであることだな。