ATOMIC OPERA - Penguin Dust (1997)
はい好きなバンド。日本では1stがBURRN!で「陰鬱なKING'S X」と切り捨てられてさほど注目を浴びることもなかったけど、当時のMTV Headbangers Ballではシングルカット曲"Jutice"がちょいちょい流れていてかっこよかった。
1stは初期KING'S Xと二人三脚だったサム・テイラーがプロデュース、この2ndはタイ・テイバー（KING'S X）所有のスタジオで録ってミックスにはアラン・ドス（GALACTIC COWBOYS）も参加という、KING'S X周辺人脈オールスターな環境で制作されている（ブックレットで知ったことにはKING'S Xのジェリー・ガスキルが結成当初のドラマーだった模様）。内容は当然期待を裏切らない、テキサス流ヘヴィリフ＋グッドハーモニーなグランジハードロックのややダークな変異体。
シンガーのフランク・ハートはTHUNDERのダニエル・ボウズによく似た柔らかなハスキー声。ALICE IN CHAINSのズクズク感を少し抑えたような、クリーンなアルペジオとの重ねが効果的なドロップDリフと、ここにしかない異種の調和を見せている。
整合感はあるがメタル然としたゴリゴリとはちょっと違い、オフな鳴りを強調したドラムサウンドとも相まって、JAWBOXやSHINERのようなポストコア～エモグランジ畑の歌心派の人達と非常に近い質感。2nd以降のTHOUGHT INDUSTRYや脱インダストリアル以降のSHIHAD（オーストラリア）然り、辛うじてメタルフィールドにいるけど心は全然そんなんじゃないという人達のことはこれからも全力で記憶し続けたい。
マイナーキー主体の彩色が途中からだんだん一本調子に感じてくる向きもいるかもしれないが、似たタイプを探すのが難しい希少な音楽性であるので、ツボに入る人は何も気にせずスゲーずっとかっこいい～と楽しく聴き続けられるはず。
2nd・3rdは自主リリースで、4thも発売後一度もリプレスされていない。これは持つべきと思った人は、中古1000円超えでもまずまず妥当かも。
現在、フランク・ハートはテキサスの教会の指導者をやっていて、そういう内容のソロアルバムも制作している。
この2ndの時点ではあまり表立ってそういう色を出してきていないけど、裏ジャケの権利関係の警告表記でこっそり「Unauthorized reproduction is evil.」と小ボケを飛ばしている。のちのキャリアを思うと納得の言い回し。