2023/11/23

TBSドラマ「誰にも言えない」劇伴について

中学時代にリアルタイムで観た、貴島誠一郎とTBSが最も輝いていた1993年に放映されたTVドラマ「誰にも言えない」について、その後の人生でずっとつべこべ言っている。
隣人の恐怖、何重にも存在する過去の秘密、その他ありとあらゆるカードでもって賀来千香子が追い詰められるという大変ダークでアブノーマルな内容の作品で、プロット自体もさることながら佐野史郎・野際陽子・山咲千里の怪演がひたすらに凄まじく、当時実家の姉と一緒にゲラゲラとウケながら楽しんでいた。そのノリで人に勧めたり、音楽活動で曲の歌詞の題材にもしていたのだが(IOUEEE"最後のリインカーネーション"とDOIMOI"舞踏室")、数年前Paraviにお試し加入して全話見返したところ、記憶の中のイメージ以上にいろいろとエクストリームすぎて、この作品のことを生涯で一番心に残っているドラマだと公言する人でいて大丈夫なのだろうか...と約30年越しに初めて気が付いた。もう遅いし思い入れは変わらない。

ブレイクしかけのミスチルを抱えて当時まさに上り調子であった小林武史が手掛ける劇伴も冴えわたっており、同じく貴島作品である「ずっとあなたが好きだった」「ダブル・キッチン」と3作合同のサウンドトラックCDはむろん入手済み。明るめのいい場面で流れる"サイレント・ハピネス"などはいかにも小林武史節の切ないフックが凝縮された超名曲。
そのほか、劇中で佐野史郎扮する麻利夫が繰り返し聴いているカリプソのレコードの曲はBRUTE FORCE STEELBANDの"Say Si Si"であることがファンによって特定されていて、こちらもSMITHSONIAN FOLKWAYSから購入可能なオンデマンドCDRを随分前にそれ1枚だけオーダーした。円高だったあの頃は本当によかった。更にそこから切り出した携帯の着信音は、機種変更しても代々引き継いでいる。

だがコアなファンなら、サントラにも入ってない謎の1曲が残っていることにお気づきのはず。ちょっと神妙なシーンで流れる、スティールパンのみのアンサンブルによる寂しい曲。サウンドプロダクションからして先述の"Say Si Si"よりはかなり年代的に新しいと推測されるも、2023年11月現在、Wikiにも載っていなければ、Shazamでもヒットしない。それを今日たまたま購入してしまったので全「誰にも言えない」ファンに向かってこっそり教えます。

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独自の美意識でよりぬかれたアーティストが集まるニューエイジ/アンビエント/フュージョン専門レーベル・WINDHAM HILLから89年にリリースされている、スティールパン/鍵盤奏者アンディ・ナレルのリーダー作「LITTLE SECRETS」のラストに収録の"The Songlines"がその曲。

WINDHAM HILLはピアノやアコギ独演ものの作品がCDでもレコードでもやたら安く売り捨てられているけど、似たようなジャケがひしめくバックカタログの中には、極上のシンセミュージックやエスニックニューエイジフュージョンが混じっており、全く侮れず、ここのところ日々中古情報をパトロールしている。
このCDは今日店頭でたまたま見かけ、おーWINDHAM HILLじゃんと手元のスマホでセルフ試聴したところ30年分の電撃が走り、即捕獲した。
アルバム全体は優美なシンセの冷涼感に包まれた非ファンク系エレクトロフュージョン。スティールパン入りで南国ぽくもあるし、バレアリックのド直球名盤ということで問題ないと思う。他のメンバーは不勉強につき分からない人ばかりながら、ジェイムズ・テイラーのライブDVDで見かけたパーカッショニストのルイス・コンテが半分以上の曲で参加している模様。

あとはいつでも買えすぎて逆にずっと持ってないユーミンの主題歌を8cmシングルで手に入れたら、BGMの部はコンプリート。こういうライフワーク的な探し物もだんだんと達成されてきて、その先に何があるのかよく分からなくなりつつもある(年頃的に)。収集って何なのでしょう。何であったとしても心が買うべきだと言うのだから、当面はそれに従い買う。

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