2023/02/14

TESLA - Bust A Nut (1994)

80年代USヘアメタルムーヴメントの中で頭角を現したバンドながら、その典型でもなければ分かりやすい変異種でもないTESLA。バラードでシングルヒットを放って広く知られることになったものの、当時のオーディエンスはバンドの総体をどう見ていたのだろうか。
DOKKENや初期RATTのような鋼鉄感をうっすら醸し出したりもしつつ、印象としてはとりあえず「不良系ではない枯れ系アメリカンハードロック」に落ち着いているかに見える。しかしクセの強い二人のギタリストは、いかにもブルージーな型にはまりに行くことを全然しない。バッキングの一挙手一投足が全部何か言いたげでちょっと神経質な感じ、それが二人分絶妙にばらけながらも噛み合う感じは、(音楽性は全く違えど)QUEENSRYCHEあたりの筆致に近い気がする。ど真ん中ちょい外しの脇道を選んでは「ここがオレらの王道」とばかりにズカズカ行く歌メロやコード進行の足取りはRAGEの如し。それでいて最終的に「キャッチーでいいね」とも言わしめるとは、なかなかの隠れハイブロウっぷりなのではと思う。

世間が「アメリカンハードロック的『キャッチーでいいね』はもう結構」という風向きになってしまったグランジブームの渦中に、彼らが投げ込んだのがこの4作目。ヘヴィ&シリアス風味、その反動で人気があった和やかアンプラグド、元々の持ち味のキャッチーHRを謎の離れ業で接続した冒頭曲からして、やってやろうじゃんというフレッシュな闘志をビシバシと感じてすばらしい。ムスティンが歌ったらそのままMEGADETHになりそうな2曲目"Solution"も底抜けなポップさとちゃっかり抱き合わせになっていて、器用すぎる。かつ「グランジ化してもかっこいいけどめちゃくちゃALICE IN CHAINSですよね」的なバンドが多かった中、TESLAはTESLAらしさをより濃縮しながら時代に順応したというのが、この時期を生き抜いたHM/HRバンドの作品群の中でも表彰モノの快挙だと思う。
ただし誰にも一歩も譲らずひたすらにTESLAっぽいため、アルバムの構成の中で各曲の役回りを「これはドンヨリするやつ」「これは高揚するやつ」と即座に飲み下し難く、そこに面白みを見いだせないと「何か取っつきにくい」という印象に転じてしまう人もいるかもしれない。期待通りのエキサイトメントを最大限に与えてくれるというよりは、同時期にリリースされていた近隣バンドの作品群を見渡したあとで改めて向き合ってみると、ますます凄みに気づくタイプの傑作といえそう。

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