2022/12/15

HURRICANE - Slave To The Thrill (1990)

どっちかというとLast metal of the 80sな、HURRICANEの3rd。
カルロス・カヴァーゾの弟トニー・カヴァーゾ(B.)、ルディ・サーゾの弟ロバート・サーゾ(G.)を核として結成されたということで、QUIET RIOTのリアル親戚バンドとして注目を集めてもよさそうなところを、1stは自主リリースしてそこからメジャーデビューの2ndまでに3年かかるという、なかなかの苦労人なキャリアをもつ。この3rdではギターがLIONとBAD MOON RISING(正確にはHOUSE OF LORDS)の間にサクッと立ち寄ったダグ・アルドリッジに交代している。

しかしこのバンドといえば何はなくともケリー・ハンセン(Vo.)。復活FOREIGNERの看板を務める手腕をもつ最高のシンガーです。ヤンチャ感や荒れっぽさは薄く、ブルージーなラインを完璧にこなせる翳りがあり、高域の余裕は業界随一。それこそルー・グラム(FOREIGNER)やポール・ロジャース(BAD COMPANY)みたいなハードロックフィールドに収まらない名シンガーと肩を並べる実力者な割に、HURRICANE以降FOREIGNER参加までは渡り鳥的に短命プロジェクトにちょこちょこ参加する活動のしかただった。
この人やRIVERDOGSのロブ・ラモス、CHINAにいたブライアン・コフメール、SKINTRADE~ALFONZETTIのマッティ・アルフォンゼッティあたりの「揺れる艶っぽさ」系の人にワタシはめっぽう弱い。

曲に関しては特段の個性はなく、RATTの「DETONATOR」みたいに「垢抜けていて仕上がりきっているから気持ちよく聴ける」という私感。WINGERほど鋭角にシャレ込んでもいないし、SKID ROWその他のような不良ノリもなく、DANGER DANGERほどのアンセム職人ぶりには及ばず。
クレジットを見ると作曲には外部のライターも噛んでいるようで、デズモンド・チャイルドっぽいサビが耳をひく"Temptation"に名前があるジェフ・ジョーンズなる人は、1st以来の付き合いである模様(参加歴の中にスティーヴン・ビショップの大名盤「BOWLING IN PARIS」があった)。
プロデュースのマイケル・ジェイムズ・ジャクソン氏(ミドルネーム込みで名乗らざるを得ない名前...)はTHE ANIMALSやらPABLO CRUISEやらも手掛けてきている人だそうで、ハードロック絡みでは脱メイク後のKISSとも仕事をしている。そしてジェシ・コリン・ヤング(ex.YOUNGBLOODS)の80年代のシケシケAOR大名作「THE PERFECT STRANGER」や90年代の好盤「MAKIN' IT REAL」も氏のプロデュースとな。これはポイントが高い。

と色々あるけど、やはりケリー・ハンセンですよ。ダグ・アルドリッジもさすがのハイレベルな仕事ではあるけども。
オリジナルリリースがENIGMAとあって、中古市場では希少度と需要のはざまで少しずつ高値をつけられてきている感もある。気になる向きはお早めに。

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