2021/12/02

THE ALMIGHTY - Powertrippin' (1993)

THE ALMIGHTYはガンズ以降のロックンロール回帰ブームに呼応してイギリスから登場した4人組。往時のメタラーはこのバンドのおかげで確実に「母音で始まる単語の前のtheは『ジ』」ということを記憶していたものだ(出典なし)。昔BURRN!で初めて彼らのことを見たライブ写真が、上半身裸、汗だか血だかわからないベットベトな何かで長髪を顔面全体にはりつかせた強烈なビジュアルだったのをよく覚えている。音の方も、ボトムから突き上げるタイプのリッキー・ワーウィック(Vo./G.)の歌唱が強めに主張していて、ガンズよりは肉弾戦向きな骨太感があった。

89年に1st、91年に2ndをリリースするうち、世間はみるみるグランジに染まっていって、「コレでいけると思ってデビューしたのに、急にこんなのダメ、ここが岐路ですってどういうことだよ」と少なからず当惑があったのではと思う。いっぽうでシンプル・ソリッド・ヘヴィなアプローチがにわかに評価されだした風潮は、彼らのもともとの個性を深化させる後押しにもなったと思われる。
とにかくスタジオアルバム3作目にして彼らは大変革を決断し、ALICE IN CHAINSに豪快でアーシーなサザンロック風味を加えたようなグランジ対応型スタイルとなったこの「POWERTRIPPIN'」をリリースする。プロデュースはSUICIDAL TENDENSIESやANTHRAXの諸作を手掛けたマーク・ドッドソン。

筆者はメタル畑のバンドがこの手の転身を図った作品を追うことをライフワークにしているけど、上手くいっていない例ももちろん多々ある。THE ALMIGHTYの場合は、変化の方向性とバンドの体質が無理なくマッチしていて、生き残るために真新しいパラダイムに食らいつかんとする緊張感と集中力(成功している作品はだいたいそこがたまらない)もしこたま込められており、ここで初めて本来の姿の片鱗を見つけたといってもいい大成功パターン。その後さらにヘヴィさを強化したり、ルーツにもつパンク風味を開花させて唯一無二の存在になっていくことになる彼らの、覚醒の入り口がこのアルバムであったといえる。

後半になるにつれドロップDの響き一辺倒な傾向が強まり、若干のダルさもある。1-6曲目と7-12曲目でAB面に割るならば、A面の緩急と曲のツブの大きさだけでも、このアルバムを名盤たらしめるに足りていると思う。ヴィニー・ポール(PANTERA)のように重さと小気味良さと大きな体型を兼ね揃えるスタンピーことスタンプ・モンローのドラミングがまたよい。
聴いてみて感銘を受けた向きは、続く「CRANK」「JUST ADD LIFE」も試していただきたい。いやこのアルバムの何かズクズクした濁り感が最高なんやという人は、ザック・ワイルドのPRIDE AND GLORYと、ALICE IN CHAINSの1stを一生聴くべき。

Youtubeの検索結果