2021/05/31

最近の収穫から

【後日註:この記事は盤面のクリーニングが充分でないアナログディスクについての感想を含みます】

「アナログプレイヤーを導入した」シリーズのつづきです。何だかんだと買い過ぎない制約を設けようとしていたけど、そんな誓いを守り通せるような人間ならば、今頃数千枚のCDの壁に囲まれて暮らしているはずがない。

7インチは本体も送料も安くて最高(ただしリアル店舗ではなかなか見る気にならない)。
LPは曲がいっぱい入ってるから最高(ただし海外通販の送料は安レコ狙いに見合わない)。
リアル店舗でLPを物色したあとで見始める、テカテカして角ばったケースに収まったCDコーナーの味気ないこと。CD専門時代と比べて物色時の集中力6割減。だけどCDは盤面の汚れもホコリも静電気もさほど気にすることなく、20数分で裏返したりする必要もなくて最高。
こんなあるあるを皆さん通過したのだろうなと、齢40過ぎにして初めて体験し、ひさびさにリスナー人生が盛り上がっております。購買対象がすべて旧譜だけど。

という最近の収穫の中から、いくつかピックアップしてご紹介。

7インチいろいろ

好きです。買ってます。安いから。

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WHITESNAKEの「SLIDE IT IN」収録曲"Give Me More Time"。これは当時の宣材写真と適当な文字&ベタを組み合わせたいかにもなデザインで、佇まいとしてはそんなに惹かれないけど、コージー・パウエルをマーティン・バーチが録ってるというだけでもアナログで聴く有難みがある。
購入の目的はB面に収録されているFLEETWOOD MACのカバー"Need Your Love So Bad"。CD界では長らく1987年のシンセ伴奏バージョンでしか聴けなかったこの曲、こちらはグッと趣きのあるパイプオルガンバージョンで、近年になってようやくアニバーサリー全部のせ再発みたいなやつに収録されることとなったレアテイク。アナログだとこのようにシングルB面であっさり手に入るのでうれしい。

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こちらはゲイリー・ムーアの名バラード"Empty Rooms"。アルバムではA面ラストに収録されていて、内周歪みが気になったためシングルで購入...したところ、あのオブリが、あのシンセが、練習用マイナスワン音源の如く全然入ってない未完成バージョン。知らなかった~。
もともと83年の「VICTIMS OF THE FUTURE」に収録された素朴でバンド然としたバージョンが初出で、その後85年の「RUN FOR COVER」にもAOR度を上げたシンセ多めバージョンが再集録されたのだけど、このシングル収録のものは後者になりきる手前の、ゴージャスなのか寂しいのか分からない珍テイクでした。しかし2度も録り直すとはよほどお気に入りだったのか、レコード会社に「お前この曲で売れるから」と圧をかけられたのか。

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手抜きなようで案外嬉しい、アルバムのジャケそのまんま+αのパターン。あの"Jump"もこんな質素な一色刷りのジャケで売られていたんですね。カップリングは「1984」の中でも往年色強めの、キャタピラの如き16ビートがかっこいい"House Of Pain"。ファンをガッカリさせすぎないようにバランスを取ってたんだなあ。
"To Be With You"はメンバー写真を使ったジャケでカップリングも異なる別バージョンが存在している模様。90年代メタルはLPが高いので、7インチで片鱗に触れられるだけでもありがたい。

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フィル・コリンズのヒットバラード"One More Night"。これはちょっと珍しい、ビデオクリップからの切り出し静止画を使ったジャケ。実によい。
しかしこの人のアートワークは文字が常に自筆の手書き。ジャケも顔だし、自分大好きなのかどうか尋ねられてるインタビューがあったら探したい。

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ありがたみ最高峰、シングルのみのオリジナルジャケもしくはアルバムの写真のカット違い。
RAINBOW"I Surrender"、確認したけどアルバムのジャケとは手袋の脱げ具合が違う別の写真です。いい。
EXTREME"Rest In Peace"はアルバムの色違い・あしらい違い。これもLPはとても高価なはずなので、両面アルバム収録曲でもじゅうぶんありがたい(カップリングは"Peacemaker Die")。イントロのストリングスはめちゃくちゃアナログ映えします。

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Discogsあるある、「Sleeve:Generic」見落とし。物はRAINBOWの「GATES OF BABYLON」からのカット"L.A. Connection"。アルバムと同じ、例の三頭政治ジャケのはずだったのだけど残念ながら真っ白な汎用スリーブに入って届き、しかし幸いピクチャーレーベルのカラー盤だったので、自室の太陽神として生身のまま壁に掲げることに。「バビロン」からの音源をリマスターではないバージョンで久々に聴いたけど、オリジナルはこういうやたら高音不在なミックスだったということを、友人M田君から初期国内盤を貸してもらった高校時代ぶりに思い出しました。

LP/12インチ

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さっき登場したばかりのフィル・コリンズの3rd「NO JACKET REQUIRED」。このサイズで見てはじめて、汗だくだったことを知りました。もうちょっと下がってもらえますか。

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イングヴェイ・マルムスティーンの2nd「MARCHING OUT」。リアル店舗でメタルの輸入盤のいいやつにはなかなかお目にかかれない中、バーゲン価格で運よく捕獲。サウンドプロダクションが今二つ三つなこのアルバムも、アナログなりの良さがあるだろうか...と思って(しかしどんなふうに今二つだったかは曖昧な状態で)買ったけど、バッキングギターがモノラルでセンターにしかいないうえにボタボタと荒っぽい処理のドラムが最前に張り出すしょうもないミックスはやっぱり良いも何も...でした。全盛期の流麗すぎるリードギターが生々しく聴ける点はよい。安かったので特に後悔はないけど、ここまでくると30cmのジャケを買ってるだけという気持ちになるので、音質にはシビアになろうと再び心に誓った次第。

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こちらは店頭で遭遇して、ちょっと高い(※それでも市場的には適正~お得くらい)けどさすがに青春すぎるから買っとくか...というだけだったS.O.D.「SPEAK ENGLISH OR DIE」。CD(リマスター前の往年盤)での音のイメージはゲショゲショとして余裕のない感じという印象しかなかったけど、なんとマスターが全然違うパターン。CDは高音・低音を雑にガバーッと上げてあって、ギターのハイミッドのカラーがまるで変わるほどのいじりようであったことが、LPを聴いて初めてわかりました。こっちはもっとスッキリして、シンバルの高音が自然に上に抜ける余裕がある。CDでは異常にスナッピーがビリビリしたスネアも劇的にナチュラルになって、胴のポンという響きがちゃんと聴こえる。最高!ということは初期ANTHRAXも...

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同じMEGAFORCEリリースのKING'S Xの90年作「FAITH HOPE LOVE」。90年リリースとあってやや高かったけどわざわざ探して購入。音の方は何らのマジックがあるだろう...と大いに期待したら、結論からいうと「雑なCD化」の逆パターン(※あとで註あり)。
クレジットを確認すると制作はデジタルレコーディング。スッキリしすぎなくらいのCD音質がきっと完成形で、アナログは歪みよけの高音カットが施されただけという印象。あまり有り難くない。
しかし珍しいことに、盤の一部に残ったバリが引っ掛かってまともに再生することさえできないという、ちょっとした不良盤で、つまりはおそらく未再生品。そういえば両面ともキズ・汚れがまったくついていない。間違ってもヒビなど入れないように気を付けながらバリを金属ヤスリで削った結果、問題なく回るようになりました。ちなみに写真右上のエンボスっぽい痕は、文字を読み取って調べたところ、サンプル盤であることを示すフランス語とのこと。

※後日註:キレイと思われた盤面をクロスでよーく拭いてみたところ、超微細なチリがかなりの量つまっており、それを取り除くことで高音は復活してナイスバランスになりました。奥が深すぎる...

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80年代サウンドに接近しているところが好きな、BAD COMPANYのポール・ロジャース在籍期最終作「ROUGH DIAMONDS」。特殊ジャケだとは知らなかった。タイトルにちなんでか、ジャケの開口部分がダイヤモンドカット?で、写真がのぞいているひし形はインナースリーブが見えるくりぬき穴。水色べたもメタリックな光沢のある印刷だし、予算あったんだな!ということが窺い知れる。

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メタラーなら胸に抱えて棺桶に入りたい、ロニー・ジェイムズ・ディオの呼びかけで企画されたメタル版ウィーアーザワールドことHEAR AND AID"Stars"。参加アーティストの単独音源をあわせて収めたLP、シングルの7インチも存在していて、これは45回転の12インチシングル。A面にLPと同じ7分バージョン、B面は7インチ収録のもの(5:10)よりさらに短いと思われる4:43バージョンの"Stars"および参加者インタビュー音声。この最短バージョンの編集、もちろん削られているのはギターソロで、その間引き方がブラッド・ギルス(ロングバージョンの2回目)→クレイグ・ゴールディ→バック・ダーマ(BLUE OYSTER CULT)→以上。ええ!つまり最後の3人を切り取っただけなのだけど、生き急ぐかの如く輝くヴィヴィアン・キャンベルも、衝撃の新人スピード王(当時)イングヴェイも、強靭なハンマリング&プリングで魅せるジョージ・リンチも、一切カット。そうですか。ちなみに裏ジャケには歌回し&ソロ回し早見表が載っていて便利。

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ツインでハモるサビの裏メロはスミス&マーレイのメイデンコンビだったのか。ボーカル勢はジェフ・テイトの新世代感(当時)と、タメも揺らしもしない譜面通りなドン・ドッケンが際立ちますな。5分バージョンの編集が気になるのとジャケも微妙に違うので、7インチも買わねば。

以上でした。