2021/06/25

CDの解脱

(カイセツではなくゲダツです)

中高年がオーディオマニアになる心理とカメラ好きになる心理はたぶん似ていて、自分自身から切り出した一次的な何かをどうこうして世に問いたいという若き熱意がひと段落し、やがて既存の何かをよりよくキャプチャし評価するほうに経験と感覚と気力その他の資源を使い始める(かつその中に自分主体のこだわりをいくらでも放り込めるため、疑似一次的な充実感も得られる)ということなんではなかろうかと、アナログを収集してはCDとの差異やその背景をちまちま気にしたりする己を顧みて近頃思う。ちなみに前回(S.O.D.のくだり付近参照)の見込みどおり、ANTHRAXの「AMONG THE LIVING」も「SPREADING THE DISEASE」もアナログとCDとではマスターのEQ具合が違いました。スラッシュメタルの中古輸入盤LPは1枚2,000円前後~を覚悟するのが普通という世界なのだなあ。15年前に手を出しておけばよかった。

ともあれ、さしあたってのこの傾向が続くとアナログが増え続けて収納問題が不可避になる。部屋の壁は既にCDで埋まっているどころか、棚に収まるあてのない盤の高層平積みが林立して有効床面積がモリモリと消費されてきた。どうにかしてCDの占有スペースを圧縮できるといいけど、ライブ盤・ベスト盤もコンプリートして通し番号タイトルを揃えた初期CHICAGOなどは、今さら部分的に売り払って歯抜けにせず、きれいに通し番号のまま持っておく人生でありたい。
そうなったらこれしかないということで、最近はCDの容れ物を取り払って魂のみとする解脱行為に勤しんでいます。

1枚ずつ専用袋に移すプランは、手間も費用も凄まじいことになってしまうため不採用。
やや簡易すぎるけど、重度の中古ハンター時代に蓄えたビニールカバーに、キリよく揃っているアーティストの作品をまとめて入れています。
いざやってみると「書庫」な感じがしてこれはこれでけっこう気持ちがよい。たまに引っぱり出して聴いた後、「そのアーティストの他の作品は棚の同じ場所に並んで収まっているのに、1枚だけ適当な場所に置いて迷子になってしまう」というトラブルを回避できるのも意外なメリット。

不安といえばディスクのレーベル面がブックレット裏面に、記録面はバックインレイ内面に常時接した状態で長期間置いておくことになることで、これが数年後、微妙な湿気ではりついて、剥がそうとしたときには...みたいにならないことを今から願っている。難が発生した場合には速やかに報告します。
もうひとつ、まとまった数揃っていない=思い入れの薄いアーティストが、もっと好きなほうの一群(解脱済み)を差し置いてジュエルケースに居座ったままになってしまうのはいかがなものかという悩みもある。これに関してはビニールカバーを買い足せばある程度は解決するんだけど、今まであんなにレジで「ビニールカバーいりません」と言い続け、それでもたまり過ぎたのをちょっと捨てたことすらあるアイツを、自ら買い求めるなんて信じられない。(気持ちの問題)

魂を抜かれたジュエルケースの処遇については、いつか心変わりして解脱組をやっぱり手放す気になった時にケースがあった方がいいんだろうなと思ったりして、ヒビ有りのものはガシガシ捨てて(名古屋市では燃えるゴミ)、あとはとりあえず段ボール箱に詰めている。

まだ聴くかもしれないCDをこの状態でしまっておくのは抵抗があるけど、容器だけならこうやってパンパンに押し込んで、平気で隅っこに積んでおける。いつでも蘇生させられる構えで魂と容器の分離だけをする、ということでもじゅうぶん意義深い気がする。
先々週くらいからワーッとやり始めて、おかげで近年で最も有効床面積が増えました。解脱はおすすめ。