2021/11/11

円溝の内側を永遠に移動し続けるホコリとナガオカ式DIYラベルプロテクター

性懲りもなく同じ話題ですみませんが。

アナログを買い始めてじきに、ホコリ・チリ対処は喫緊の課題であると気づいてからは、親の仇のごとく盤上の汚れ除去に努めている。CDなら音飛びするかしないかの0:100だけど、アナログの場合、チリの細かさと奥まり具合によっては、イコライザで丸めたかと思うくらいナチュラルに高音が削れることがあるから本当に油断ならない。マスタリングの違いがどうのと書いていた数か月前の記事も今となっては相当あやしい。

対策として、お古のレコード専用クリーニングブラシを調達できたところまではよかった。それを使うと、確かにホコリ・チリは一か所に集まるが、ブラシがそのまま絡め取ってくれるところまではいかないから、別の手立てでどうにか溝の外へと追いやる必要がある。ここ凄い壁じゃないですか?
息を吹きかけたところで飛んでいかないし、濡れた布でぬぐってもちょっとは盤面に残ってしまう。
しかも一見きれいな盤でも、しつこくブラッシングすればした分だけ、溝の奥から見たこともないような超微細なチリがエンドレスに湧いてくることがある。これじゃいくら定評のある湿式シートで拭ったところで、溝の奥にチリを押しやるだけに思える。

世の人はこの状況にどうやって対処しているのか?簡単に正解が転がっているだろうと思ったら、手軽な決定打が意外と見つからず、オカルトの様相を呈しかけてすらいる。

(中略)

などなど色々な説に行き当たり、それらをもとに試行錯誤した結果、以下のような手順に落ち着いて、効果も上がっているようなので共有してみたい。

鉄則:洗う前にゴミを取り除く

以下「専用ブラシ」と呼ぶものはこれ。

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いちおう由緒正しきナガオカ製。こいつのチリ誘出能力はすごい。
各社製品の比較まではしていないけど、一番最初に試しに買った、似て非なるただのホワイトボードクリーナーは全然ダメだった。

いきなり水や洗剤に頼ったり、銘柄つきのマイクロファイバー布に頼る前に、乾いていて動きやすい状態のチリをこいつで出来る限り一箇所に集めるのがよいらしい。
実際、何もせずいきなり水洗いしたあとの盤面にこの専用ブラシを使うとこうなる。

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なんか人間のフケっぽい嫌なルックスをした、チリが水分で寄せ集まってやや大粒のフレーク状になったもの。水洗い後のブラッシング一発で根こそぎ取れてくれればそれはそれでいいんだけど、再生してみるとまた湧いてきたりするので、本当に油断ならない(※汚れ具合にもよる)。

1. 用意するもの

まず先述の専用ブラシ
次にマイクロファイバー布。毛足が長く水分をたくさん吸うやつと、微細なホコリを取ってくれそうなメガネ拭きのようなやつの2種類あるとよい。後者は業界で評判の東レ「トレシーZ」でできたメガネ拭きがちょうど家にあったので、ありがたく拝借。

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そして水の入った霧吹き。ワタシは情報収集中に行き当たった、アルカリ電解水なるものだという「水の激落ちくん」をホームセンターで買ってしまったけど、どう見ても同等品らしきものが100均にもある。しかもこれから解説する使い方だと、ただの水でもいいんじゃないかと思う。

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もうひとつ、これはまだベストチョイスが見つかっていないけど(ゆえに写真は省略)、超極細毛かつ柔らかめの歯ブラシか、先の柔らかい絵筆のようなもの。もっぱらスプレーされた水滴を塗り広げるのに使う。
盤面を傷める心配もしつつ、溝のゴミを掻き出してくれたらいいなという思いで、ワタシは超極細毛かつ柔らかめの歯ブラシを使ってます。硬め・太め・ギザギザカットはNGと思われるのでご注意を。

最後に、安心してレコードを置ける。これは真っ平な段ボールでもいいと思う。うっかり端の方にテープなどがついていると、盤面を拭く往復の動きでこすれて粘着成分がうつったり、最悪キズがついたりするので、くれぐれも真っ平で何もないものを選ぶ。
ワタシはネット購入でLPが届いたときの梱包材+買い替えたPC用プリンターを処分する際に分解して出てきた部品(ちょうど径が合ったりするのでこういう端材はストックしておくに越したことはない)+某ユニオン名古屋店限定のレコスケスリップマットを組み合わせて、立派な台を自作しました。バエまくる。

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2. とにかくチリを掻き出し、集め、取り除く

最初に、今回のおそうじ対象の初期状態をご覧に入れましょう。

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THUNDERHEADの「Crime Pays」!チリノイズひとつない状態で内周歪みにも負けず"Life Is Only A Goodbye"を聴いてやる、という強い気持ちがなにより必要。

まずは盤を濡らさずに、専用ブラシで根気よくチリを寄せ集める。グルグルと完全な円を描いていると効率が悪いので、盤を4分割するイメージで、頂点から左右に90度ずつ、逆(最下点)からも同じく左右に90度ずつ。汚れ具合に応じて各ブロック10~20ストロークくらいはやる。

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するとこのように、左右にチリの地平線ができる。
そこに水をスプレーし、歯ブラシ(または筆)で水滴をつなげるように広げて、チリを水の中に抱き込む。

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このとき歯ブラシ(または筆)の先を見ると、砂粒っぽくまとまったホコリが既にけっこうついている。歯ブラシ(または筆)はまだ何度か使うので、それをちゃんとはらっておくのがポイント。
毛足の長い布でざっくり水分とホコリの固まりを拭き取ったあと、メガネクロスでさらに拭いて確実に水分を取り除く。(濡れていると次の工程が中途半端になるのでしっかりやる)
まずこの時点で充分キレイになったように見える。

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だがしかしここで、さっきと90度ずらして、左右の地平線から天頂・天底へ向かってまた10回ずつ専用ブラシをかけると...

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あるようには見えなかった、より細かいチリがまだこれだけ出てくる。恐るべき潜伏能力。
これもさっきと同じく、できた線にそって水をスプレーして、歯ブラシ(または筆)で水滴をのばし、毛足の長い布でザックリ拭き、メガネクロス的なものでしっかり拭く。
チリ体積量が少なめならば、これを両面にやって完成でもよいでしょう。

3. ゴミが取れたら汚れ落とし

ここまでの手順では、移動する物体としてのゴミはおおかた取り除けているけど、盤面にへばりついている皮脂などの汚れに関しては、クロスで拭いた十字部分しか対処できていない状態。より完璧なクリアさを求めて入念にやりたい場合は、盤面全体に対して「霧吹き → 水滴つなぎ → ザックリ拭き → 仕上げ拭き」をおこなう。

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写真は水滴つなぎを行ったあとの状態。できるだけ盤面全体がヒタヒタになるようにして、しかも水滴つなぎは2周くらいやる。このときくれぐれも盤面を傷つけないように。
毛足の長い布で水を吸い取って、トレシーZでよく磨いて乾かし、ダメ押しで専用ブラシをかけてみると...

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また出た例のフレーク。しつこい。
だがチリの絶対量は既にかなり減っているので、ブラシ2周がけくらいで出てきたフレークを息でフッと吹けば(生チリと違って大きさがあるため吹けば飛ぶ)、もう完璧です。この道のりを裏面にもやる。めげずにやりきる。

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清掃完了後、再生したあとの盤面。もうフレークは出てこないし、ブチノイズも無し。勝利!
一聴めの感動をより高めたいときは、一度45回転で無音再生して、わずかに出現することのある盤面のフレークと針のヨゴレを払ってから聴けばなお確実。

発展:ナガオカ式DIYラベルプロテクターで丸洗い

ここまでやっておいて、冒頭で省略した世の定説に今更戻ると、プロもやってる有力な手法として「中性洗剤で丸洗い」なるものがある。
これもいきなりやるとフレーク発生の可能性はあるのだけど(泡洗いの時間を長めに取ればそうでもないかもしれない)、上で紹介した手順中の最終段「全体スプレー拭き」の代わりにやるとより効果的かもしれない。

水道でザバザバ流すことになるので、中央のラベル部分を傷めないよう配慮する必要がある。そのための専用プロテクターが、市価2,000円前後で売っている。
しかし評判を見てみると、「強く締めたら割れた」「ちょっとは浸水する」など、さほど完全とはいえない模様。しかも構造は単純となれば、自作するしかありません。

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材料たち。すべて100均商品で、左上:食品保存用容器(フタのみ中央に穴をあけて使用、2個必要)、右上:カップやお椀用のシリコンレンジ蓋(真ん中のツマミ部分は切って使用、2枚必要)、中央下:クラフト/DIYコーナーにある木製ノブとネジのセット。食器用保存容器は2個セットのものがあったので4点合計440円也。

LPでも7インチでも、直径10~11cmあればラベル部分がちょうどよく収まるらしい。保存容器のフタはぎりぎり10センチで、しかも正円ではなくてちょっと平らな辺があるけど、結論からいうとこのくらいは特に問題にはならなかった。
組みあがったものをLPに装着した様子がこちら。

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シリコン蓋をパッキン代わりに挟んで、保存容器のフタを上下からネジで締めて押さえつけてます(見えてないけど裏側もある)。保存容器のフタは力がかかると若干変形するけど、固い素材と違ってたやすく割れないのが逆に好都合 。

防水性能はいかほどかというと、

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キワ付近にはまあまあ入り込む。洗い終わったら素早く取り外して拭かねばならない。純正のナガオカさん製はどうなのだろうか。
こういうことなので、豪快にジャバーッと全体を流すことはせず、盤を傾けて持った状態で、ちょっとずつ回しながらノブより下部分だけをすすぐのが安全策。「しぶきも防げる取っ手」くらいの出来だと思って慎重に扱いたい。

ここまでやって、もちろん静電気除去もやっても、パチノイズが取れないやつは取れなかったりして、CDの安定感はほんとに最高だと思う。
しかし角の立った打ちたて切りたて茹でたてうどんと、さながら讃岐クオリティな冷凍うどんとの差が、確かにあるんだよなー。