2026/01/22

ZAXAS「ZAXAS」(1995 NOISE RECORDS)

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このビジュアルに「何も期待できなさそう」と思うか、その逆か、某ユニオンの廃盤セールという名の高額商品市の常連盤を見慣れると後者の感覚が育ってきて怖い。

リリースは95年。エド・レプカでもアンドレアス・マーシャルでもない「CARRANZA」と名の記されたイラストレーターによる謎キャラをあしらったジャケ。黒を効かせつつファンタジックさもある画風は、パワーメタル系かスラッシュ系か判然としない。裏ジャケのメンバー写真はシンプルな黒ずくめかつ長髪でスポーティ度は低め。そしてリリースがドイツのスラッシュ/パワーメタルの総本山・NOISE。90年代中頃のNOISEといえば、新規契約の新人はヘヴィ系に寄っていて、パワーメタル系はMASSACREやBLACK MARKあたりに流れることが多かった。ということはやっぱりスラッシュ系か...といろいろ考えさせられる外装である。

結論としてはパワーメタル系だったのだけど、それをいうより先に「稀にみるロニー(・ジェイムズ・ディオ)ミミックシンガーのいるバンド」として記憶すべき珍しいグループだった。
音楽性や音の質感は、「WORD OF MOUTH」の頃のVICIOUS RUMORSみたいなズクズク重く鈍い音作りで、SANCTUARYをもう少しマッチョにしたような妖しいムードもある。それはそうとして、ただひたすらにシンガーの歌い回しにロニー愛が溢れており、それが最大の個性になっている。

声質はそんなに似ておらず、というか全然ソックリとかではなく、ハイC付近以上になると普通にジェフ・テイト~マイケル・キスク系のメタル然としたトーンになる。
しかし歌い方だけ、常時ではないが細かいチャンスを見つけては、薄い歪みの入れ方、コードへのメロディの添わせ方、鼻腔感の入れ方、場面に応じた裏声への移行など、ロニーがやりそうなあらゆるクセ挟んでくる。それを追うだけで楽しめて、曲の良し悪しなどはあまり入ってこない(歌唱を乗り越えて入ってくるほどの突出性もなければ、飛ばしたくなるほど退屈でもない、好ましい質感の浴びものとして楽しく聴ける)。

サウンドプロダクションは簡素だが整っており、演奏の安定感は各人ともに充分(リードギターのみ微妙)。色付けとしての長いリバーブをあまり付加せず、アタックをパチパチ固くもせず、生っぽい音場を素直に再現するドラムサウンドが絶妙に良いなと思って調べてみたら、ロブ・グルームというエンジニアはレゲエやらフュージョンやらを節操なく手掛けていたところに来た初のメタル仕事がこのアルバムだったらしい。でこれの次にBAD MOON RISINGの「OPIUM FOR THE MASSES」でも仕事をしているという素晴らしい連鎖。

1曲でもこれぞというキラーが入っていればもう少し語り継がれしろもあったのかもしれないが、あくまで「おいしい90年代の空気をいっぱい吸える」+「ロニー似」どまりなのが寂しいやら愛せるやら。"The Last In Line"みのある節回しで曲順も同じ2曲目を陣取る"Images Of Princess"、イントロから潔く"Children Of The Sea"の歌い出しフレーズをかましてくれる6曲目"In The Beginning"などはひたすらに嬉しくなる。「イーヴォ」の言い慣れ過ぎてる感よ。サブスクにないのでYoutube検索結果から聴いてみていただきたい。

「マイナー、良質、思い入れを持つには至らない」という幾多の盤をこれまでCD裁判で有罪にしてきた分際が、今敢えてこれを物理的に所有するかどうかは相当きわどいラインだが、ジェフ・テイトを無断クローンしたかのようなNEW RELIGION、ジェイムズ・ラブリエにほぼ完全一致する声色使いもさることながら本家感の破片をズタズタに貼り合わせたような楽曲もある意味凄いARKHEなどと並ぶアイテムとして、後生CD棚に居座ってもらうのもやぶさかではない。ちなみに全く高額盤ではないので、お探しの際にはご安心を。