SLAYER「DIVINE INTERVENTION」US Original (1994 DEF AMERICAN)
ディスクユニオン名古屋店で受け取れる東京レコード界隈の入荷力・在庫力と個人間売買サービスによるCD棚の再資金化の両輪がトップスピードに乗り続けて久しく、せっかくの収穫物が爆速で埋もれていくため、大仰なテーマも設けず背景をうだうだ説明も(そんなに)せずポンとレビューを投稿できるカテゴリをこのたび新設した。今後は買いたての感動盤について気軽に書いていきたい。

で最初はこれ。このサイトをいま何人の方に見てもらってるか分からないけど、CDオンリー派の方には本当に申し訳ないアナログ盤トピックです。
CDで入手するのは全く苦労しないSLAYERの94年作。"One"のヒットでMETALLICAが頭出しした「しっかり重厚長大だがノリだけどこかハンディな新時代メタルアンセムの構造」に"Seasons In The Abyss"で呼応して成功し、ヒーローメンバーだったデイヴ・ロンバードが抜け、BIG4のほかの3組がメタルのパラダイムの大転換を見事乗り切って、グランジブームまだもたけなわだったタイミングに、SLAYERはどっちに行くかを見せたアルバムだった。
やったこととしては、音楽的内容はほぼ何も変えず、DEF AMERICANおかかえのデイヴ・サーディ(BARKMARKET)の手腕で音の質感だけを荒々しいオルタナティブな手触りにし、ついでに「羊たちの沈黙」ブームにシンクロして90年代的サイコマーダーテイストを自らのテリトリーに違和感なく引っ張り込んで、結果的に不動の帝王感、「いつでもSLAYERだしいつも最高」というインパクトを与えることに大成功したという総括でよいかと思う。
で今回はオリジナルアナログの話。CDの市価と比べると30~40倍にはなる当時盤のLPをノスタルジーだけで買ってしまうか否かは当然躊躇する。しかも個人的にこのアルバムは所持総数1桁台の頃聴きまくったというわけでもないので尚更だが、BARKMARKETは好きなので、デイヴ・サーディ×SLAYERをアナログで...というのはやっぱり魅力的。結果をいうと、笑えるくらい大正解な買い物だった。
多少マスタリングの差異があるどころの違いではない。
CDだと手前に左右広くエンハンスされたギターのEMG感が浮かんでいて、紙を破くような独特のアナログ風味に仕上げられたドラムが真ん中で暴れまわり、ベースは立ってはいないが敷いてあり、ボーカルはしっかり前に出てくるという、生々しくも分離と広さを確保した音になっていた。
LPはもう見せようとしているものがまるで違う。ギターはゲショみ増し気味でもっとセンター近くに集められ、ローは全体的にCDより深くまで表現されていて、ドラムがその重なりの中心付近を一打一打狂ったような激烈さで前面から打ち潰しているような具合。空間的な広がりや余韻はむしろ殺されていて、高音方向の抜けにもこれといってアナログ特有の追加ボーナスはない。60年代のモノラル制作音源に見出されるのと同じ野蛮なフィルタを通して、マッシュルーム頭の人達と同じチャンネルSLAYERを見せられているかのような感覚。アナログの醍醐味を「太い、温かい」方面でまとめるのは賛同しないが、これは歴史的にアナログメディアにつきものだった音をなぞっているという意味で非常にアナログっぽい。
ついでにいうと、サーディ先生がこの数年後に手掛けるSYSTEM OF A DOWNの1st(CD)の質感にも近い。
これが後年のリマスタリングによる改変だったら「余計な解釈を上乗せせんでくれ」と思うところだけど、CDと同時に発売したLPがこうなっていたのだから、「この時世にアナログ聴く奴にはこういう音で体験させたかった」という制作当時の明確な意図である。買って聴くまで秘密にしてないで、もっと大きな声で言ってくれよ。
音楽的には変わっていないと書いたけど、陰鬱でねっちりしたアルペジオパートが若干増えて、時代の空気にそれなりに沿ってはいる気もする(「SOUTH OF HEAVEN」以来そうといえばそうだからやっぱり変わっていないのかもしれないが)。時の荒波を切り抜けたあとのキャリアを振り返ってみると、定番ポジションについて以降は特に、なんかZZ TOPみたいな存在だったのだなあと思った。