2025/02/10

ジャッコのズッ友、リンドン・コナー

相変わらずこんな感じの地味な掘り下げを一人で楽しんでいる。もっと共有しがいのあるネタのストックも沢山あるが(DigHelperに制作者本人がドップリ沈んでいるお陰でリスナー活動はブログ更新全盛期に負けず劣らず元気)、現物が届いてホカホカなタイミングゆえ今回はこちらで。

以前の投稿でご紹介したジャッコ・ジャクジクは、80年代初頭から続くキャリアの中で活動のステージが微妙に移り変わるあいだも、数人の信頼できるミュージシャン仲間がずっといて、長年お互いの作品に参加しあっている。DIZRHYTHMIAその他で一緒のギャヴィン・ハリソン、自身と同じくプログレとニューウェイブ/シンセポップ界に半々で足を突っ込んできたデイヴ・スチュアートなどなど。
そんな中の一人にリンドン・コナーというキーボーディスト/シンガーがいることを最近認識した。

コナー氏は、90年代にLEVEL42に参加するようになってから、長らくLEVEL42およびそのフロントマンのマーク・キング界隈の人という感じでやってきたようだ。LEVEL42はややファンク/ダンサブル色の強めないわゆるハイテクAORグループで、物凄く雑にまとめてしまえば「イギリスのTOTO」。ジャッコ師もLEVEL42とは90年代初頭に関わりがあり、アルバム「GUARANTEED」完成後に専任ギタリストとして加入してジャケに写ったあと、録音物は何も残さず脱退するという驚きの立ち回りをかましている。ちなみに先述のギャヴィン・ハリソンもライブメンバーとして参加歴があるそうで、更にマーク・キングのソロ名義バンドがこの3人になりかけたこともあったとの事。まー仲良しでんな。
その他、コナー氏は最近のCUTTING CREWのツアーメンバーとして日本にも来ていたりと、イギリスのそのあたりの世代の界隈で仕事人として活躍しているようだ。

コナー氏のデビューは、ジャッコ師(※昔から、個人的に憧れるミュージシャンには勝手に師をつけている、それだけ)がリードシンガー兼ギタリストとして在籍していたポストパンク時代の幻のプログレポップバンド、64 SPOONS。78~80年にかけて録音された音源をまとめた唯一のフルアルバム「FRESHY CUT RECORDS」は入手難易度がなかなか高く、ジャッコ師関連作に挑む者を悩ませる1枚。DiscogsでもEbayでもスッと買おうとは思わない高値だが、日本のプログレッシャーがせっせと列島内に集めておいてくれたお陰か、ユニオンでうっすら希少くらいの優しい値段で保護することができた。

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盟友ギャヴィンとの覆面プロジェクトであったTHE KING OF OBLIVIONの唯一作「BIG FISH POPCORN」でシャレの域を超える熱烈ザッパ・フリークぶりを披露していたジャッコ師だが、64 SPOONSはそれに通じる不安感をたたえた陽気さと、カンタベリーシーンからの影響を色濃く反映した柔らかい諧謔、ポストパンク時代ならではのよくカドが立ったビート感などが混然一体となった音楽性。ジョン・グリーヴズ~アンソニー・ムーア~ピーター・ブレグヴァドのラインを思わせる、裏のあるポップスを体現している。ギターのフィーチャー度は比較的控えめで、猛烈に弾きまくるスタッカートなクラヴィからリリカルな生ピアノまで、コナー氏の鍵盤が中心的位置でアンサンブルに貢献している印象を受ける。

次にコナー氏が主要メンバーとして参加した作品が、FROONというグループで88年にCBS/EPICからリリースしたセルフタイトル作。

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FROONにはSPLIFFという前身がいて、こちらは地元ドイツではニューウェイブ/エレポップブームの頃にかなり人気を博したバンドであった模様。ごく初期はポストKRAFTWERKな曲から普通にギター主導のポストパンク風の曲までなかなか節操がなく、エレクトロ全開な時期を経て、少し親しみやすさを強めた4thでセールスも絶頂を極めた...かどうかはWiki情報だけでは分からなかったが、ともかく85年にもろもろの不一致で一旦解散している。
そしてイギリスから、当時のファンにしてみれば「リンドン・コナーとかいう奴」(そんな受け止め方をした人も少なからずいた感じがAmazonレビューやYoutubeコメントから伝わってくる)をシンガーとして迎えて、名前も新たにシーンへ戻ってきたFROONは、それまでの顕著な鋭角強めニューウェイブ感から趣向を変え、見違えるほどスッキリとバリ取りされた高品位AORになっている。コナー氏のボーカルはMIKE + THE MECHANICSのポール・ヤングあたりに近い、スムースで若干ハスキーな文句なしのAOR声。総じて「FAHRENHEIT」期のTOTO、後期THE POLICE、「SO」期のピーター・ゲイブリエルをやや軽薄にまとめた感じで、前歴に思い入れがない身としては失望する要素は何もない。シンセとギターが壁にならないように巧妙に噛み合うアンサンブルはよく聴けばなかなか偏執的なものだし、突き抜ける明るさやわかりやすい感動に易々と手を出さない甘味管理も奥ゆかしい。ジャケの印象に近い、涼しげでデジタルな感触がアルバム全編に一貫して存在している。
2025年2月現在、Youtubeにはアルバム中でもアゲ感の強い2曲と、一番どっちでもいいと思っているアフリカンかぶれ風の曲だけが上がっているが、メロウめな曲がナイスなので、機会があれば是非フィジカルの盤で堪能していただきたい。CDは希少で高値気味だがLPなら適当な捨て値で出現することもあるかもしれない。

そしてここでも例のネットワークが発動しており、ジャッコ師はあんまりらしくない1曲で作曲にクレジット、ギャヴィン・ハリソンは半分くらいの曲でドラムもしくはパーカッションを演奏している。ほんとうに行く先々でもれなく仲間を呼び寄せまくっていておもしろい。

コナー氏はこの後、あの輝かしいDIZRHYTHMIA(1stも2ndも)や、LEVEL42一派となったあともジャッコ・ギャヴィン両名のソロ作品などに参加し、共演を重ねている。
正式メンバーとして大きく存在感を放つポジションにいることが少なくても、追っかけると確実に良い作品に行き当たる彼のような人は、真新しい音楽になかなか食指が向かないが何かしらの発掘によって感動を得たい中年にはたまらん存在であり、新たに出会えると楽しみが増えて良い。