CELTIC FROST 旧規格CD問題
過去に売り払ったことを後悔しているCDナンバーワンといえば、スイスの前衛芸術派暗黒スラッシャーにしてデス/ゴシック/ブラックメタルの大いなる開祖CELTIC FROSTの「TO MEGA THERION」と「INTO THE PANDEMONIUM」のジャーマンオリジナル盤。99年のリマスター発売時に喜んで手放してしまった。バカッ!
ジャケが一部改変されて、左右にバンド名と作品名が入ったのも違和感があった。「TO MEGA THERION」のほうは冒頭の重要曲"The Usurper"を含む3曲が86年のEP「TRAGIC SERENADES」で再録されたバージョンに差し替えられており、サウンドプロダクションの不統一化にもかなり違和感があった。だが当時は「リマスター=良くなった」という盲信によりそれらの違和感を自ら握りつぶしてしまった。なんというバカ。
後になって「あの時持ってたあのバージョンも買い足そう」と思っても、往時はあくまでカルトな存在だったからか、市場に出回っている数はさほど多くないらしい。オリジナルやそのリプレスはユニオンで2000円以上、ブックオフで運良く捨て値でお目にかかるなんてことも無く、「あの時売りさえしなければ...」という思いでずーっとライフワーク的に旧規格CDを探し続けていた。
未だゴールに到達してはいないものの、旧盤買い戻しの取り組みで得た知見を共有したい。
「INTO THE PANDEMONIUM」(1987)

リリース順が逆だけど先にこっち。
この作品のCDは裏ジャケにも全面に絵画があしらわれているため、リプレス/リイシューされて品番が変わったり、ディストリビューションが変わったりするたび、黒い四角で一部の文字を覆って、その上に別の文字が入る。見てのとおりガッカリである。

これがないバージョンというのが、結局かなりの最初期のイシューのみになってしまう。
旧規格を求めている時点で、外見上の趣きは非常に重要なはずなので、オンラインで旧規格盤に出会ったときは、ガッカリなパッケージじゃないかどうか、EANコード等を頼りにDiscogsでよくよく確かめたほうがよい。
なんとかガッカリポイントが最小限な91年US盤を入手したものの、今度はブックレットの中が適当で、見開きの内側が真っ白。何かしょぼくて寂しいため、先程の写真のとおり2バージョン所有したままになってしまっている。
アナログはアナログで、あの重要なJACULAばりの暗黒弦楽曲"Tristesses De La Lune"がカット!Hell NO!なので「オリジナルにこだわるならアナログを持ってりゃいい」ということはなく、CDは絶対必要。しかしアナログのゲートフォールドジャケの内面には、CDでどこにもあしらわれていない、別のかっちょいい絵画がバーンとプリントされており、アナログも絶対必要。
「TO MEGA THERION」(1985)

こちらは更にややこしい。さっきサラッと書いたけど、「リマスターでは"The Usurper"を含む3曲が86年の再録バージョンに差し替えられている」というのが本当に大問題。
差替え後の86年バージョンは全体的にデモっぽいような荒々しさで、序曲"Innocence And Wrath"とのつながりがとにかく良くない。この改変も当人達の意思、こちらの耳が慣れるべき...と考えた99年の自分が本当にバカだった。
ユニオンの入荷情報を見張っていても、「INTO THE PANDEMONIUM」と比べて旧規格盤が出現する確率が極端に低く、出てきても高値が多い。言うても買い替えだし2000円以上はなあ...と二の足を踏み続けて何年経ったことか。
で、ある時ヤフオクで、USオリジナルのリプレスを、誰とも競らずにお手頃価格で入手できた。推定87年以降91年以前のCOMBAT盤。

初期3代までのUS盤(COMBAT+NOISEおよびBMG+NOISE)は、裏ジャケや背ラベルの文字が一部赤い。黒地に水色のドイツ盤とは対照的ながら、これはこれで禍々しさが凄い。Discogsではバリバリのプレミア価格がついており、よーしこれで戦いに終わりが...と思ったが違った。
80年代スラッシュ作品がCD化の際に勝手にゲショゲショバシャバシャなマスタリングを施されてしまうのはあるあるで、このバージョンにもその傾向が見られた。EQ改変は無いが、無神経なコンプというかサチュレーションというかでアタックの重みという重みが均され、ただでさえ過剰なリバーブのアーリーリフレクションがバッチリはっきり独立して聴こえてくるような、完全にアカンやつ。
これはオリジナルのリプレスだというから、US1stプレス(盤だけ日本製造というたまにあるパターンで、完全に高値アイテム)のほうも、音声のマスター自体はこれと同一なのかもしれない。所有してる方は是非教えてほしい。
実は上記の件より前に、やたら安くそしてピカピカなジャーマンオリジナルを不安とともに買ってみたら、案の定リプロだったということがあった。ご丁寧にマトリックスナンバーの一部がNからHに変わっているのでわかりやすい。
だが音のほうは確実に、高校生の頃サウンドベイ金山で買ったあの個体と同じ。このさいリプロでも、音だけ聴ければいっか...とくじけそうになりながら、揚げたアンテナは降ろさずに正規旧規格盤サーチを継続していたのだった。
でつい最近、US盤なんだけど裏ジャケのあしらいがドイツ盤と同じという、実に悩ましい93年FUTURIST盤(=写真右)が1000円以下で出品されているのを発見、購入。

アメリカだからCOMBAT盤のマスターと同じなのか、発売元レーベル変更にあわせて音も改めてドイツ盤と同じものが支給され直しているのか、一か八かで手に入れたが、結果は後者でした。泣ける...
COMBAT盤の赤文字に思い入れは無くて、アメリカ人による勝手なデザイン改変でしかないので、そっちはリプロともども手放す予定。(Discogs価格よりちょい下で買うぜという方がいたらご連絡を)
ちなみに、上記以外の「TO MEGA THERION」近年プレスの音源差し替え事情を確認してみたところ、
- 大幅改装前の98年デジパックリイシューでは、音源差し替えに関するクレジットなし(=セーフかも知れないがおそらくプレス数が少なく、NOISEのロゴが新しい丸いやつになっていて旧規格の趣きなし)
- 改変ジャケではなくなったが左上にバンド名・右下に作品タイトルが小さく入るようになった最新の2017年デジパックリマスターでは、99年版と同じく「TRAGIC SERENADES」のテイクに差替え
とのこと。入手しやすい現行品は99年リマスター以降のものなので、何の気なしに買うと差し替えバージョンに行き当たる確率が非常に高いということになる。
上記の事実を全く知らずに、なんか音にまとまりがないアルバムだなとか、グッシャグシャの変な音だなと思っていた向きは、どうか初期ドイツ盤もしくは93年FUTURIST盤を探してみていただきたい。
ちなみに後年のリマスターシリーズからは一切無視されている88年の「COLD LAKE」(あろうことか流行りのヘアメタルに接近しようとして大変なことになったアルバム)だけは、オリジナルを売らずに持っている。アナログこそたまーに出品があるものの、CDは本当に見かけないので、持っている人は大切にしてください。メタル界で最も酷評を受ける1枚ながら、ワタシはけっこう好きというか、歌詞のしょーもなさを除けば曲はそれまでと大差ないのではという気がずっとしている。